818 / 961

愛すという行為4

俺も姫野も料理には慣れているおかげか、特に問題なくハンバーグを作り終えた。レタスがあったので軽くサラダも作り、ダイニングテーブルに二人分の食事を並べた。 「二人分並んでるなんて、不思議」 「これから慣れるよ」 目をしばたかせて突っ立っている姫野の肩を軽く押す。せっかくの料理が冷めてしまう。 姫野が椅子に座るのを見届けてから、俺も椅子に座った。 「両手を合わせてください」 「ふふ、なにそれ。小学校みたい」 「美味しい夕食、いただきます」 「いただきまぁす」 給食のような掛け声を出せば、姫野は笑って合わせてくれた。 そして姫野が箸を取る。 「蓮くんの少しぼこぼこ」 「うるさい。俺の家じゃいつもこんなもん」 「そうなのー?」 「いいから食えよ。なんならもらっちまうぞ」 「やだー!」 いーっと姫野が歯を見せて、一口分ハンバーグを切る。俺は思わずその様子を見つめてしまう。 華奢な手が持つ箸が、小さな口元に運ばれる。桃色の唇が開き、白い歯が覗く。ハンバーグはその中に入り、すぐに見えなくなった。 姫野は俯き加減で咀嚼している。 「……美味しい」 「そか。よかった」 俺はひと安心して、姫野の作ってくれた綺麗なハンバーグに箸を伸ばす。

ともだちにシェアしよう!