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愛すという行為4
俺も姫野も料理には慣れているおかげか、特に問題なくハンバーグを作り終えた。レタスがあったので軽くサラダも作り、ダイニングテーブルに二人分の食事を並べた。
「二人分並んでるなんて、不思議」
「これから慣れるよ」
目をしばたかせて突っ立っている姫野の肩を軽く押す。せっかくの料理が冷めてしまう。
姫野が椅子に座るのを見届けてから、俺も椅子に座った。
「両手を合わせてください」
「ふふ、なにそれ。小学校みたい」
「美味しい夕食、いただきます」
「いただきまぁす」
給食のような掛け声を出せば、姫野は笑って合わせてくれた。
そして姫野が箸を取る。
「蓮くんの少しぼこぼこ」
「うるさい。俺の家じゃいつもこんなもん」
「そうなのー?」
「いいから食えよ。なんならもらっちまうぞ」
「やだー!」
いーっと姫野が歯を見せて、一口分ハンバーグを切る。俺は思わずその様子を見つめてしまう。
華奢な手が持つ箸が、小さな口元に運ばれる。桃色の唇が開き、白い歯が覗く。ハンバーグはその中に入り、すぐに見えなくなった。
姫野は俯き加減で咀嚼している。
「……美味しい」
「そか。よかった」
俺はひと安心して、姫野の作ってくれた綺麗なハンバーグに箸を伸ばす。
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