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蜜夜7

瞼の外の明るさに目を開ける。開けたままだったカーテンの向こうで、太陽が少し顔を出している。 ぼんやりしたまなこでそれを見つめ、おもむろに視線をずらす。腕の中には姫野がいた。 さらさらの髪を撫でてみる。 愛しいという感情がふわりと浮かんでくる。 「……ん」 姫野が身じろいで、ゆっくり目を開ける。俺の胸元から顔へと視線を移した。 「おはよう、姫野」 「……おはよ、蓮くん……」 まだ眠そうな姫野の前髪を分けて、額にキスをする。姫野は表情を緩めると、甘えるように俺の胸に潜り込んだ。 俺は腕を回して姫野を閉じ込める。触れ合う素肌が心地いい。 「……あのね、蓮くん」 「んー?」 「ボク……彼氏みんなと、別れるね」 姫野はどこか不安そうな声でそう言った。顔を埋めてしまっているから、表情が見えない。 「蓮くんのおかげで……ちょっと、わかった気がするから……。これで、合ってる……?」 姫野は顔を上げなかった。 本当にわからないのだろう。愛というものも、恋というものも、きちんと経験してこられなかったのだから。 不安な姫野と反して、俺はじわじわと喜びが沸くのを感じる。 「合ってる。ありがとう」 「うわっ」 その喜びを思い切り腕に込めた。急に強く抱きしめられた姫野はびっくりしたようだ。 「んもうっ! 蓮くん、痛い!」 「嬉しいの」 俺の拘束から姫野は抜け出ると、キッと睨んできた。俺は笑いかける。 姫野は俺の言葉を受け止めると、じわりと頬を赤くした。照れる基準がわからない。しかしからかう理由には十分。 「姫野の決断、めちゃくちゃ嬉しい」 にやにやしながら放てば、姫野は唇をわなわな震わせる。 耐えきれなくなったのか、ベッドから立ち上がる。はらりとシーツが落ちて、滑らかな裸体が晒された。 「お風呂入って学校行く!」 裸を見られることは何も恥ずかしくないらしい。 俺はくすりと笑う。 「はいはい。一緒に行こうな」 「……うん!」

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