831 / 961

ストーク・ストーキング1

清水くんと姫野くんの関係がめでたく実り──僕はまさか本当に付き合うとは驚いたけれど──平穏な日々を過ごしていた。 体育祭という三年生にとっては最後のイベントが終わり、いよいよ受験が近づく。もう勉強しない言い訳がなくなった。僕にとっては前と同じ日々なので平穏だけど。 ただそんな日々を崩すものが一つ。 ……パシャッ。 エコバッグを握りしめ、振り返る。人影が電柱の後ろに見える。隠れているつもりなのかもしれないが、足や頭の一部が覗いている。その手にはカメラだ。 僕は再びスーパーに向けて歩み始める。その人も、その人なりにこっそりとついてくる。 言うなれば、ストーカーだ。ちょっと間抜けな。 ここ数日、一人で外を歩いている時のみ、ついてくるのだ。しかも盗撮もする。何かの間違いかと最初は思っていたけれど、続いているところからしてそうではないのだろう。 立ち止まりスマホを取り出す。『このあと家に行ってもいい?』と颯太に送った。 素直に相談してみようかなって。 「……わっ」 即座にスマホが震えるからびっくりしてしまう。もちろん答えは『いいよ』だ。 ふっと笑みをこぼして僕はまた歩き出す。 パシャリと一眼レフの音がした。

ともだちにシェアしよう!