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ストーク・ストーキング2
颯太の家の前に立ってチャイムを鳴らす。インターホンのはずだが、特に声は聞こえずすぐにドアが開いた。
「そうっ……あれ? 久志さん」
「おう、亜樹ちゃん」
しかし出てきたのは久志さんだった。予想外だったので一瞬フリーズする。
だがよく考えてみれば今日は久志さんのお店の定休日だ。
「買い物ついでか」
「あっ……はい。そんな感じです」
久志さんは僕が持つエコバッグをさらっと取ってリビングに入っていく。僕も慌ててついていくと、久志さんは既にキッチンだった。
「一旦入れとくな」って言葉に頷き、視線を走らせる。颯太はどこにいるのだろう。
「颯太なら部屋。飲み物用意してるからおっさん出て、だとよ」
「そうなんですね。相変わらずだ」
「だよなぁ」
二人でくすくすと笑う。
颯太には秘密の会話。いたずらをしているみたいで楽しい。
「そいでなんかあったん?」
「え?」
「買い物帰りって珍しいだろ」
「あー……」
久志さんの言葉に僕は視線を落とす。
久志さんに話してもいいのだろうか。僕としては心強いけど、余計な負担をかけてしまう気がする。
その時、部屋の開く音がする。振り返ると颯太が部屋から出てくるところだった。
「亜樹、飲み物用意したからこっちおいで」
「あ、えと」
「おれも聞く。だからこっちだ」
どうしよう……と目線を泳がせると、久志さんがリビングのソファを示す。颯太はあからさまに顔をしかめた。
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