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ストーク・ストーキング3
「なんで亜樹との時間をおっさんに邪魔されなきゃいけないわけ?」
颯太は不機嫌丸出しでそう言った。久志さんは片方の口角を上げる。
「大人がいた方がいい話題なんだろ?」
「え? そうなの? 亜樹」
久志さんに視線を向けられ、颯太は柔らかな声をかけてくる。二人に同時に見つめられて焦る。
ストーカーなら、大人がいた方がいい……とは、思う。颯太が頼りないとかではなく。久志さんはその気持ちを察してくれたのだろう。
「うん……。久志さんがいた方がいい、かも?」
ちょっと大袈裟かもしれないけど一応。知っておいてもらう分にはいいはず。
颯太は頷くと部屋に戻ってコップ二つを持ってきた。それをローテーブルに置くとソファに座る。僕はその隣、久志さんはL字の短い方へ座る。
「それで何があったの?」
「あ、えっと……ちょっと心配なことがあって、颯太に話したいな……って思ったんだけど」
そう言うと颯太は嬉しそうに顔を綻ばせる。その表情に安心する。
恋人だから、僕らだから、悩みは共有していい。迷惑じゃない。言い聞かせる。
「あのね、ストーカーされてる、気がする」
「は?」
「あ?」
颯太も久志さんも表情が恐ろしいほど冷たくなる。その瞳は鋭利な光を宿した。
さっきまでの表情はどこへ行ってしまったのか。
僕のためとはわかっているけど、でも、怖い。
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