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ストーク・ストーキング5
次の日。
僕は一人で道を歩く。放課後どこかへ買い物に行くといった様子に見えるだろう。
とりあえず歩いてとのことなので従っているが、案外難しい。早くストーカー、出てきてくれないだろうか。
颯太の作戦というのは本当にストーキングするものだった。一人で歩く僕とかなりの距離を開けてストーキングをし、ストーカーが出てきたら捕まえる。
単純だ。でも僕が気づくほど抜けた人物だから、引っかかってくれそうな気がして、
「ひぇっ!」
考えているそばから声がする。振り向く。
「あなたですか」
「な、な、何が……」
颯太がストーカーの腕を掴んでいる。
僕も近くに駆け寄った。するとストーカーは僕を見て、パッと目を丸くする。
嬉しそうにも見えた。それにその顔にどこか見覚えがある。少し童顔で男にしては可愛い顔だ。
知り合い……ではないと思うけれど。
「亜樹……!」
「えっ?」
「……名前どこで知った?」
「ひっ……」
颯太がギロッとストーカーを睨む。僕でも怖い。ストーカーもびくっと体を揺らした。
どうやら怯えやすい人みたいだ。絶対ストーカーに向いていない。
「亜樹のストーカーしてましたよね?」
「えっあっ……その」
「しかも盗撮も」
「違っ……あっ、いや……」
「何がしたいんですか。亜樹に何するつもりですか」
「ちが、違うんです。ぼく、ただっ……」
「ただ?」
颯太の丁寧だけど厳しい声に、ストーカーはわかりやすく怯える。なんだか可哀想になってきた。
「えっと……!ぼく、亜樹の父なんです……」
「……ん?」
次に聞こえた言葉に、僕の思考は固まった。
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