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フラッシュ4

そして当日。 颯太は遅れていくと言って聞かなかった。最初は二人で過ごせということらしい。頑として譲ろうとしなかった。 冷静に考えれば、父は僕と二人きりを望んでいるはずだとわかる。頑固なのは寧ろ僕だったのかもしれない。 そう思って僕は待ち合わせ場所に一人で行った。 公園の入り口に立つ。いちょう並木が続く公園だった。すっかり葉は黄色に色づいて、風が吹くと黄色を宙に散らす。進むともみじもあるみたいだ。 子供が走り回ってきゃあきゃあ言う声と、いちょうの立てるさわさわという音。 穏やかだ。 「亜樹」 「……あ、こんにちは」 閉じていた目を開けると、そこには父が立っていた。 「颯太くんは?」 「ちょっと遅れてくるそうです」 「そっかぁ」 父は自然と僕の横に並ぶ。その首には一眼レフが下がっている。 やはり写真を撮りにきたみたいだ。 「ありがとう。今日はわざわざ」 「あ、いえ……! 僕、こういう綺麗な景色好きなので」 「よかった」 父はにこりと嬉しそうに笑った。

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