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フラッシュ6

「麻里子はずっと応援してくれていたよ。ぼくの写真が好きだとも言ってくれた。でも信頼って……最低だと思う、でも、時に……重いんだ」 「……重い……」 下げた視線もまた、赤色を捉えた。 いちょうともみじが地面を埋め、赤と黄が入り混じっている。 「そう。生活面は麻里子の方が頑張ってくれていた。はっきり言って、頼りきりだった。その状態での、信頼だったから」 父の視線を感じて顔を向ける。父は眉をハの字にしている。情けなくてごめんねって言いたげだった。 僕はそんな父に何も言えない。子供の無邪気な声が耳に入ってくる。 父はまたカメラを覗いて一枚撮った。 パシャッと言う音がやけに鮮明だった。 「麻里子がとても大切だった。でも夢も、捨てきれなかった。だから去ったんだ。立派になるまで、支えられるようになるまで、帰らないって」 「……そのこと、母さんは?」 「知らない。教えなかった。別れとお礼の言葉だけ伝えたんだ」 カチ、カチと父が一眼レフをいじる。どうやらカメラロールを見ているようだ。 まるで過去を追うように。 「……きっとぼくは逃げたんだ」 ぽつり。 声が落ちる。

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