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フラッシュ9
「颯太」
「こんにちは、颯太くん」
「こんにちは」
颯太は僕と目を合わせた後、好青年の顔つきになって父を見た。
僕のためにしてくれているのだろう。嬉しいのと、少し複雑なのと、混じる。
「颯太くんも今日はわざわざありがとうね」
「いえ、寧ろ俺までありがとうございます」
「いやいやー、色々聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
父がベンチに向かって歩き出す。木漏れ日の心地好さそうな場所だった。
僕たちはそこに並んで座る。
「亜樹って学校でどんな感じなのかな〜とか、普段はどういう子なのかな〜とか」
「ああ。本人では答えられないことですか」
「そうそう」
すごく嫌な予感がする。父は父でとても嬉しそうに笑っているし、颯太は父越しに僕をにやりと見てくるし。
「亜樹は普段から真面目で優しい人ですよ」
「へぇ。嬉しいなあ」
「それにとても可愛い」
「うんうん。それはぼくも思う」
ほら、こうなった。
まるであの時みたいだ。母さんが酔った時みたい。頼むから僕の前でやるのはやめてほしい。
「前に学校で俺が……」
「なになに」
こうしてまたもや、僕の前で、僕の話が繰り広げられていったのだった。
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