847 / 961

フラッシュ9

「颯太」 「こんにちは、颯太くん」 「こんにちは」 颯太は僕と目を合わせた後、好青年の顔つきになって父を見た。 僕のためにしてくれているのだろう。嬉しいのと、少し複雑なのと、混じる。 「颯太くんも今日はわざわざありがとうね」 「いえ、寧ろ俺までありがとうございます」 「いやいやー、色々聞きたいことがあって」 「聞きたいこと?」 父がベンチに向かって歩き出す。木漏れ日の心地好さそうな場所だった。 僕たちはそこに並んで座る。 「亜樹って学校でどんな感じなのかな〜とか、普段はどういう子なのかな〜とか」 「ああ。本人では答えられないことですか」 「そうそう」 すごく嫌な予感がする。父は父でとても嬉しそうに笑っているし、颯太は父越しに僕をにやりと見てくるし。 「亜樹は普段から真面目で優しい人ですよ」 「へぇ。嬉しいなあ」 「それにとても可愛い」 「うんうん。それはぼくも思う」 ほら、こうなった。 まるであの時みたいだ。母さんが酔った時みたい。頼むから僕の前でやるのはやめてほしい。 「前に学校で俺が……」 「なになに」 こうしてまたもや、僕の前で、僕の話が繰り広げられていったのだった。

ともだちにシェアしよう!