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フラッシュ10
「ん〜、もうこんな時間か」
父がゆるりと伸びをして、それから腕時計を見る。あたりは薄っすら暗くなっていた。
僕のことについて話したり、そこから派生したり、恥ずかしい時もあったけど、とても楽しかった。
「そろそろ帰ったほうがいいかな」
「そうですね」
「今日は二人ともありがとう。色々聞けて楽しかったよ」
父がベンチから立ち上がるのに合わせ、僕も颯太も立つ。
地面のいちょうがカサッと音を立てた。つられて下に目線を向ければ、黄色にいくつか混じる赤が見つかった。
「ねえ、最後に二人の写真、撮ってもいい?」
「写真……ですか?」
父の声に顔を上げる。父は僕らに一眼レフを持って見せる。僕は首を傾げる。
「本当に二人は仲良いし、信頼しあってるみたいだから……ぼくも嬉しくて。それを残しておきたいなぁって」
「照れちゃいますけど、どうぞ」
「ありがとう」
颯太が微笑んで僕と並ぶ。
そっと肩に手を回されてドキドキする。
大丈夫だろうか。距離が近すぎやしないか。でも颯太は一貫して、父に対して恋人同士とばらす気は無いという態度を取っていた。
だから多分この手も変には見えないのだろう。友人同士でも肩に手を回すくらい、するのだと思う。
「じゃあ撮るよー」
父も当たり前のようにレンズを覗く。やはり大丈夫そうだ。
颯太と一緒にピースを指で作る。父の「はいチーズ」に合わせて笑った。パシャッと一枚、写真が撮られる。
「二人ともいい笑顔」
父は僕と颯太に撮れた写真を見せてくれる。
美しい公園を背景にした綺麗な記念写真だった。写真家なだけあって、写真の撮り方はやはりとてもうまい気がする。
「とても素敵な写真ですね。素人が撮るものと全然違う」
「ありがとう。一応は写真家だからね」
颯太の言葉に父はへらりと笑う。
そして大切そうに一眼レフの電源を切った。
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