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たかちゃんの受難1

「たかちゃんのバカ!!」 きんっ……と部屋に声が響く。 普段は柔らかくて滑らかで、少し眠そうな、愛しい人の声。それが今は鋭く尖っている。 「なんで捨てちゃったの!」 その恋人、凛は俺を睨む。その声は叫びに近い。俺は驚いてしまって何も言えない。 だってここまで怒る理由がわからないのだ。 事の発端は俺が凛の部屋を掃除したこと。 凛は散らかしやすいタイプなので、俺が定期的に掃除をしている。その一環で物を溜め込みがちな凛の部屋でゴミの分別をしたりもしている。 今日はその最中に薄汚れた小さなりすのぬいぐるみを見つけた。汚いし、凛が持っている様子を見かけたこともないし、俺はいつも通り捨てた。そしてゴミ袋はゴミステーションへ。 それに凛が激怒して、今の状況だ。 「おれの許可ぐらい取ってよ!」 「凛……」 「たかちゃんの人でなし!バカ!アホ!」 「ちょ、凛」 「最低だ!意味わかんない!酷いよ!」 「待てって、理由を」 「嫌い!たかちゃん最悪!」 「いっ!」 凛は叫ぶたびに興奮していって、俺の言葉なんて聞きやしない。ついには枕を投げつけてきた。思い切り俺の顔に当たる。 俺の脳からぶちっと音が聞こえた気がする。 「お前、さっきから散々言いやがって!じゃあ自分で片付けろよ!」 「別に片付けてって頼んでないし!」 「片付けなかったら踏み場ねーだろ!」 「でも掃除とゴミの分別は別問題!」 俺も凛も互いを睨んで言い合いを続ける。今にも唸りだしそうな勢いだ。 「今まで勝手に捨てても何も言わなかったろ!」 「それはそうかもしれないけど!でもあれは……!」 凛は開いた口を閉じ、歯を食いしばる。 ぷるぷる震えた凛は、もう言葉が出なくなったのか、ずんずん俺に向かってきた。 「もう!とにかく出てって!たかちゃんの顔見たくない!」 「ああ、出てくよ!俺だって凛の顔見たくねーわ!」 俺の体を押す凛に俺はいーっと歯を見せる。 俺は部屋を出ていって。凛はドアをバタンと閉めて。 こうして久々の喧嘩が始まった。

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