853 / 961
たかちゃんの受難3
昼休みになり、凛は渡来の席の方へ行った。いつもは二人で食べているが、まさかその流れになるわけあるまい。
渡来の方を見ると、おろおろと凛と俺を見ていた。
俺と凛が一言も会話しないとか、二人一緒じゃないとか、どこからどう見ても喧嘩にしか見えないのだろう。
渡来を心配させてしまって申し訳ない。
だが俺から謝るつもりは毛頭ない。
なんで俺が謝らなきゃいけないんだ。凛の部屋をわざわざ掃除してやって、整理してやって、ただそれだけなのに。
凛だって今までずっとまんざらでもなさそうにしていたくせに。
思い出すだけでふつふつと怒りが湧いてくる。
「とーどろきくん」
「……間宮?」
俺が一人で弁当を広げようとしていたら、隣の席に間宮がやってきた。
珍しい。渡来と一緒にいないのか。
「小室くんと喧嘩したの?」
「だったらなんだよ」
「いやー珍しいと思って」
たった今イライラしていた内容を指摘されて、さらにイライラする。そもそも間宮の顔にからかいの色が見えて、普通にムカつく。
「渡来のところ行かなくていいのかよ」
「亜樹は小室くんのお相手してるから」
間宮の視線に合わせて視線を動かすと、凛と凛の話に付き合う渡来の姿が見えた。
どうせ俺の文句でも言っているのだろう。
文句を言いたいなら俺に直接言え。というかなんであんなに怒ったのか理由教えろ。
「苛立ってますねぇ」
「うるせ」
間宮は隣の席で弁当を広げ出す。俺も渋々弁当箱を開けた。
箸を掴んで乱暴に飯をかきこむ。
「仲直りしなよ」
「俺は謝らない」
「えー……」
間宮の言葉にぶっきらぼうに返事をして、凛がいる方に視線を向ける。
ばちっと視線が合って、急いで逸らした。
ともだちにシェアしよう!