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たかちゃんの受難5
「んじゃ、今見せたことを使いながら、ペアになってやってくれ」
一通り説明し終えた松田先生が言った。クラスメイトは自然とペアになっていく。当然いつも通りのペアだ。
その場合、俺は凛と組むことになる。
他の仲良いやつらはすでにペアになってしまっていたので、逃げ道は絶たれた。凛を見ると、凛も同じ風に考えたみたいだ。
互いに仕方なくコートに入る。
ネットを挟んだ向かいに凛。
俺はその姿をねめつけながら、ボールを取る。
周りが打ち始めるのに合わせて、俺もボールを放った。先ほどのお返しとばかりに結構強く。
凛はわっと声を上げたように見える。しかし普通に返してきた。
勢いよく、しかも強く返ってきた。俺はそれをまた同じように返す。
バチッと鋭い視線が絡んだ。
お互いの視線がお互いに負けないと語っている。
そこから俺らのコートだけやたら大きな音が鳴るようになった。周りは笑いつつ、外しつつ、和やかにやっているというのに。
俺らのコートはひたすらラリーを続けていた。
何回目か、凛からボールがやってきて、
「おらっ」
俺はそれを思い切り返して、
すぐにやばいと思った。
距離、強さ、勢い。全てを考慮しても、凛が取れそうにない球だ。
それでも懸命に追った凛。
その顔に、ボールが命中した。
うわぁっと周りから声が上がる。
鼻のあたりに当たったボールは跳ね返って地面に落ちる。
「凛!」
俺はラケットを投げ出し駆け寄った。
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