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たかちゃんの受難8

朝練を終え、授業を乗り越え、昼休み。 俺は弁当箱を取り出して、すぐにもう一つの箸の存在に気づく。 当然のごとく渡来のところにいる凛の元へ向かった。 「お前、箸忘れてんぞ」 弁当箱の袋の中から凛の箸を出す。渡来の机で弁当箱を広げている凛は、膨れながら箸を取る。 「別に届けてくれなくてもいいし」 「昼抜きでいいわけあるか」 「購買で買うもん」 「金もったいねーだろ」 凛はぷいっと顔を逸らし、蓋を開ける。俺も自分の席で食べようとしたら、その前に凛の弁当の中身が視界に入った。 にんじんのサラダが入っている。 俺は凛の隣の席、つまり間宮の席の向かいに座った。無言で弁当を広げる。 「これもらうから」 「あっ!」 そして凛の弁当の中からにんじんのサラダを奪う。 「勝手に取るな」 「これでも食ってろ」 サラダの分空いた隙間に俺は卵焼きを詰める。凛は上部は不満そうにしながら、卵焼きを食べる。 「喧嘩しながらいちゃつかないでくれるー?」 「ちょ、颯太」 すると向かいの間宮が甘いとでも言いたげな顔で言い放った。渡来があわあわと間宮を叩く。 俺と凛は同時に「いちゃついてないし」と返した。睨み合って、すぐに逸らす。 今のは卵焼きを食いたくない気分だったから、単なる嫌がらせだ。 「ほら、そういうとこもはやラブラブじゃん」 「やめなよ、颯太」 「でも亜樹だって仲直りしたほうがいいと思わない?」 「それは……そうだけど……」 ちらりと渡来が俺らを見てくる。 事情を知らぬまま無理やり仲直りはだめ。だが険悪な雰囲気はあまり。そう言いたげな視線だった。

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