861 / 961
りすと思い出2
謝ろうと決意して学校に行き、時間が取れると言ったら昼休みくらい。そう思って、朝練も授業中も特に話しかけなかった。
そしてとうとう昼休み。
「凛」
「やだ」
意を決して話しかければ無下にされた。
「まだ何も言ってないだろ」
「おれ、たかちゃんと話せない」
「どういうことだよ」
「話したくないの」
どうやら凛の方にはまだ意地が残っているようだ。そのことはうかがえたが、それを包み込めるほど俺は大人ではない。
つまり素直にイラッとしてしまったわけだ。
「こっちは謝ろうとしてたのによ」
「おれが悪いって言ってたじゃん」
「それを思い直したから今の状況なんだろ」
「そんなの知らない。とにかくおれは話さない」
凛は目を閉じ、ふいっと顔をそらす。強情だ。本当に強情。
そんなに話したくないのだろうか、りすのことについて。
俺は凛の腕を掴んだ。
「なに意地はってんだよ。もういい加減素直になれって」
「意地なんてはってない!」
腕を振り払われ、睨まれた。
強情な態度にも乱暴な動作にも、さらに苛立つ。
「いい加減にしろ」
「いっ」
「あたっ」
凛の声で静まった教室に、バチッと痛そうな音が響いた。脳天にきた大きな衝撃に俺は顔を上げる。高ぶった気持ちは冷めた。
そこには清水がいた。
清水は俺と凛の腕を掴むと、無理やり教室の外へ引っ張っていく。
「お前ら、そろそろ和解しろよ。二人でどっかで話し合って来い。じゃなきゃ教室入れない」
「おい!」
「あっ」
清水は冷たく言い放つとぴしゃりと教室の引き戸を閉めてしまった。
俺と凛はぽつねんと廊下に取り残される。他の教室の生徒が騒ぐ声がやけに鮮明だ。
隣の凛は俯いていた。
「空き教室行くぞ」
しかし清水の後押しを無駄にするわけにもいくまい。
今度は凛の腕を柔らかく掴む。
「……うん」
凛から小さな返事が返ってきた。
ともだちにシェアしよう!