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りすと思い出3

適当な空き教室に凛と入った。一応鍵を閉める。 ガランとした教室内には、整然と机が並ぶ。どれかに座って話し合った方がいいかもしれない。 「……たかちゃん」 声を出そうとした俺より先に、凛が俺を呼ぶ。俺は凛の顔を見た。 凛はじっと俺を見つめて、 「ばか」 そう放つ。 「…………アホ」 言われた言葉には素直に返そうと思った。 凛は俺の返答にふるふる唇を震わせる。 「たかちゃんのばか。ばかばかばか」 「凛のアホ。アホアホアホ」 「……っ! ばーかっ」 「アーホ」 「〜〜っ」 何を言いたいのかわからないが、俺は凛に乗っかった。一人で俺の返答に百面相する凛が面白かった。可愛いとすら思えるので、だいぶ俺は落ち着いたらしい。 凛はというとやはり唇を震わせている。 瞳に目を向けると、潤んでいた。そのことに驚いてしまう。 「……り」 俺が呼ぶ前に凛が俺の胸に飛び込んできた。腕が背中に回され、ぎゅうっと締め付けられる。 「たかちゃんのばか。……寂しい」 制服が濡れる感覚がする。愛しさがこみ上げてきて、俺は凛の頭を優しく撫でた。 「寂しかった、じゃなくて?」 「……今も、寂しい」 「そっか」 俺は胸の中の凛の顎を指で辿る。胸に沈めていた凛は、自然と顔を上げた。 涙をこぼす瞳にキスを落とす。凛は気持ちよさそうな吐息を漏らした。 「……凛」 「たかちゃ……んっ」 涙を吸い取った流れで、俺は凛の唇に吸い付いた。

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