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りすと思い出6

「恋したのはたかちゃんが先かもしれないけど、おれだってたかちゃんのこと、ずっと好きなんだよ」 「……り、ん……」 ずくりと体が疼く。 上目遣いで怒ってくるこのアングルにも、そのセリフにも、体が熱くなる。 ずっと一方的だと思っていた。凛が俺といるのは、幼い頃からの流れで、惰性も含まれていて。別に俺が好きだからという理由じゃないって。俺がそばに行くからだって。 「顔赤いね」 「な、うるさい」 「いひゃい〜」 思わず凛の頬を両側から押す。凛は痛いと言いつつ嬉しそうだった。俺だって嬉しい。 「あ、そうだ。ほら、凛」 「ん〜?」 そうやって戯れに夢中になって忘れるところだった。 ポケットからりすのぬいぐるみを取り出す。不思議そうにする凛の視界にそれを入れた。 「……え、なんで」 「喧嘩したあと、ゴミから掘り出した」 凛は目を見開いて、俺とりすを交互に見る。その顔がくしゃっと歪んだかと思うと、涙が溢れ出した。 「え!凛?」 「なんでそんなに優しいの〜たかちゃんのばか〜!」 「なんで怒られなきゃいけないんだよ」 「運動神経しか取り得ないくせに……!」 「おい、悪口言うな」 凛はまた俺に抱きついて顔を目一杯沈める。涙が止まらないようで、その体は小刻みに震え、小さな嗚咽も聞こえてきた。 相当寂しい思いをさせていたみたいだ。堰が切れてしまったのだろう。 俺は優しく抱きしめて、その背をゆっくりこすった。

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