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焦慮の青6

走って戻れば颯太の家はすぐだった。僕は玄関に向かわず、回り込んで颯太の部屋に向かう。 僕と颯太の特別な合図。特別な空間。 颯太の部屋の外側に立つと、僕は窓に手を伸ばす。手は少し震えていて、あの時の颯太はこんな気持ちだったのかなって思った。 こんなに緊張しながら、否定される恐怖に怯えながら、来てくれたんだ。 深呼吸して、窓を叩く。 颯太がいつもやっていたように。 すぐに窓は開いた。 「あ」 そしてすぐに抱きしめられた。 颯太が部屋から飛び降りて、僕の腕を引いたんだ。 足が汚れちゃうのに。酷いことしたのに……。 「ごめん、なさい。僕……焦って、嫌なこと言って……」 「ううん。気にしてない」 颯太は僕を強く抱きしめて、それからキスをして。愛されている感じがすごく伝わってきた。 僕も夢中で颯太を感じて。なんで酷いこと言ってしまったんだろうって、すごく不思議だし、後悔が湧いてきた。 「俺は受験のことばかり考えるのが嫌だから、切り替えるようにしてたんだけど……」 颯太が僕の背をさすりながら言う。 「亜樹には余裕そうに見えちゃったのかな。そんなの亜樹を追い詰めるだけだよね」 「ううん。違うの。僕が、悪いだけだから。颯太だって……頑張ってるのに……」

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