872 / 961
焦慮の青6
走って戻れば颯太の家はすぐだった。僕は玄関に向かわず、回り込んで颯太の部屋に向かう。
僕と颯太の特別な合図。特別な空間。
颯太の部屋の外側に立つと、僕は窓に手を伸ばす。手は少し震えていて、あの時の颯太はこんな気持ちだったのかなって思った。
こんなに緊張しながら、否定される恐怖に怯えながら、来てくれたんだ。
深呼吸して、窓を叩く。
颯太がいつもやっていたように。
すぐに窓は開いた。
「あ」
そしてすぐに抱きしめられた。
颯太が部屋から飛び降りて、僕の腕を引いたんだ。
足が汚れちゃうのに。酷いことしたのに……。
「ごめん、なさい。僕……焦って、嫌なこと言って……」
「ううん。気にしてない」
颯太は僕を強く抱きしめて、それからキスをして。愛されている感じがすごく伝わってきた。
僕も夢中で颯太を感じて。なんで酷いこと言ってしまったんだろうって、すごく不思議だし、後悔が湧いてきた。
「俺は受験のことばかり考えるのが嫌だから、切り替えるようにしてたんだけど……」
颯太が僕の背をさすりながら言う。
「亜樹には余裕そうに見えちゃったのかな。そんなの亜樹を追い詰めるだけだよね」
「ううん。違うの。僕が、悪いだけだから。颯太だって……頑張ってるのに……」
ともだちにシェアしよう!