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焦慮の青7

「ね、亜樹」 颯太の胸の中で首を振ると、優しく顎をなぞられた。自然と顔は上を向く。 颯太は切なそうに笑っていた。 「もうやめよっか」 「……え、なに、を……?」 「放課後、一緒に勉強するの。放課後どちらかの家に行くの、やめよう」 「……そう、た」 やだって言いたかった。一緒にいたかった。 だってもう時間がない。受験も大事だけど、受験が終わったら、颯太と離れ離れなんだ。 でも言っちゃだめだって、咄嗟に思った。 また僕は颯太に酷いことを言ってしまうかもしれない。効率だっていいかわからない。 これも切り替えってやつなのだろう。メリハリをつけるために。 「……わかった」 「うん。二人で一緒に我慢しよう」 「……ん」 小さく頷く。颯太は僕の手を握った。 辛いのは一緒。悲しいのも一緒。 「それでさ、今月、一日だけ一緒にいよう。誕生日プレゼントとか、勉強とか、何にも考えずに。ただ一緒にいるだけの日」 「……うん」 淑やかな満月のもとで、僕らは誓いのキスをした。

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