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凪1
颯太と約束した日から、月日はどんどん流れていった。僕と颯太は学校で一緒に過ごすだけになって、家ではおとなしく一人で勉強をした。
十二月の模試を終え、僕と颯太の誕生日も終え。
月の下旬のとある金曜日。
「俺んちにする?」
「うん」
僕と颯太は放課後にそんな話をして、学校を出た。
肩を並べて歩くのは、久しぶりではないけれど。
一緒の目的地というのは久々で。
颯太の人差し指が僕の手の甲に触れる。つっとなぞった指先は人差し指と中指の間に入り込む。僕の掌は自然と外側に向いて、恋人つなぎになった。
ふにゃりと笑みをこぼせば、頬にゆっくりキスが降りてくる。くすぐったくて目を閉じると、その隙に唇にもキスされた。
甘くて、嬉しくて、幸せで。
ただ一緒にいる日が、こんなに素敵だったことを思い出す。
僕は颯太の肩に頭をすり寄せる。壊れ物を扱うかのように頭を撫でられて、すごく幸せだった。
僕と颯太は人通りの少ない道をゆっくり進み、颯太の家にたどり着く。
颯太が鍵を開けて、僕を招き入れてくれる。
僕が入って、颯太も入って、鍵を閉める。
そうして僕らが最初に言った言葉は。
「誕生日おめでとう」
「誕生日おめでとう」
颯太は十九、僕は十八。
お互い知らぬ間に一歩大人に近づいていた。
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