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凪2

お互い誕生日を迎えたからと言って、お祝いをするとかはなかった。 「亜樹、菜箸取って」 「はい。包丁ちょうだい」 「気をつけてね」 「ありがとう」 二人でご飯を作ったり。 「亜樹、あーん」 「やっ、恥ずかしいってば……」 「いいじゃん、ほーら」 「……あ」 戯れながらご飯を食べたり。 「お風呂一緒に入る?」 「はいらな……」 「ん?」 「……はい、る」 「やった」 ほんの気まぐれで一緒にお風呂に入ってみたり。 「亜樹、好きだよ」 「僕も……すき」 「ふふ、かわい」 「んっ、ひぁ……」 お互いに愛を囁いて、普通に愛し合ったり。 いつも通りに、穏やかに、平常に、過ごした。 僕らにはもう『いつも通り』でなくなってしまった日々。たおやかな日々。 それを思い出すように、僕らは過ごした。

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