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初詣3

「亜樹のお守り俺が選んであげる」 「えっ、じゃあ僕も颯太の選ぶ」 颯太と肩を寄せ合って二人でお守りコーナーを眺めた。どうせ買うのは学業成就のお守りなのだから、選択するのはどの場所に置いてあるかくらいだけど。 「はい、じゃあこれ」 「じゃあ僕はこれ」 色も形も文字も全て同じ。だけどお互いにとって一つだけのもの。 僕と颯太は互いの選んだお守りを持って、巫女さんにお金を払った。「仲良いですね」って言われて、少し恥ずかしかった。 でもこれで受験はうまくいく、なんて安直に考えてしまう。勉強のことをお願いしなかったけれど、きっとこれで大丈夫だ。僕にとって力の源は、颯太だもん。 「嬉しい」 「これで絶対受かるよ、亜樹」 「えへへ」 颯太が選んでくれたお守りを大事に鞄にしまって神社を歩いていく。 毎年神社内で行われている催しは同じだから、去年を思い出した。去年は確か帰り際に甘酒を飲んだ気がする。 僕が火傷しかけて、颯太が優しくて……。 「今年は俺が最初から冷ましてあげるね」 「へっ」 「甘酒。飲むでしょ?」 「の、飲むけど……平気、だよ」 「嬉しいくせに」 にやにや笑う颯太に唇を尖らせて、僕は先に甘酒を配っているところまで行く。僕が甘酒を二つもらった時に、颯太は追いついていた。 僕が照れるのなんて慣れっこみたいだ。そりゃあもう一年以上、一緒なのだから当たり前だ。 「気をつけるんだよ?」 「子供じゃないもん」 「でも万が一ってことがあるから」 「過保護」 僕の文句に颯太はどこか嬉しそうに笑う。 今年は自分でしっかり冷ましてから飲んだ。やっぱり美味しい。

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