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初詣7

「それにしても、みんなバラバラなんだね」 「……そうだね」 改めてみんなの行き先を聞くと寂しい。本当にバラバラだし、それぞれ距離がだいぶ離れている。 キュッと手に力が入る。紙コップの中で甘酒が揺れた。 「でもみんな行きたいところを目指してんだもんな。頑張ろうぜ」 清水くんが殊更に明るい声を出す。 球技大会の清水くんの言葉が自然と思い出された。 確かに、そうなんだ。大学の選択は重要で、みんなが悩んで出した答えだ。だから何があっても頑張れる。 きっと、頑張れる。 「最後までやりきんぞ!よし、あれやろ!手重ねるやつ!」 「はぁ?」 松村くんが名案とばかりにみんなの手を引っ張り出す。 手を重ねるやつとは、片手を重ねていって、何か叫んで、上に手を持ち上げる、やつだろうか。絆を深める時とか、誓い合う時にやりそうなイメージ。 「いいじゃん、気合い入れようぜ」 松村くんには羞恥心がないのかもしれない。みんなの反応など見向きもせず、自分の手を差し出した。 恥ずかしいけれど、たまには、いいかな。気合いが入りそう。 僕は松村くんの手にそっと手を重ねた。 「ほら!渡来がやるんだぞ!」 「もちろん俺も」 僕の手は渡さないとばかりに颯太が続いた。 残った四人も顔を見合わせつつ次々に手を重ねていった。スポーツの試合前みたいだ。慣れない。 けれどこの一体感が、高校生って感じがして、少し楽しいかも。 「ようし、受験やりきんぞー!」 「おー!!」 松村くんの声に続いて、大きな声が空に響いた。

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