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成果の行方6

「……」 解答解説の冊子を見ながら、次々と採点をしていった。怖いから最後に残した数学に目を通して、パタンと冊子を閉じる。 得点を書き込む用紙に書き入れ、全てを足し合わせたものを下の部分に書く。 息を吐く。息を止める。 「亜樹、終わった?」 「うん……終わった……」 「どうしたの?」 信じられない。 ぎこちなく颯太を見る。 あ、どうしよう。泣いちゃいそうだ。 「……自己最高得点、だった……」 「えっ、よかった!」 「……うん、嬉しい、し……寂しい……」 「……亜樹……」 今までに見たことのないような高い得点だった。これならきっとA判定が出るはずだ。 それはすごく嬉しいし、喜ばしい。 でも一歩、そう、一歩。颯太が遠くなってしまった。 嬉しいのと、悲しいのと。泣きたくないのに、涙が溢れそうだ。懸命に堪えて、堪えて、堪える。 「颯太は、どうだった?」 まぶたに力を入れて、涙を乾かす。颯太に震える声で問いかける。 「俺も、大丈夫そう。九百点超えた」 「よかった……」 すれ違っていた時とは逆。 心はどんどん近づいて、距離はどんどん遠のいていく。 このままいけば、お互い当日風邪でも引かない限り、志望校に合格しそうだ。 別れが近い。 本番も近い。 「あとちょっと、頑張ろうね」 「うん。春休みはたくさんデートしよ」 「そう……だね」 僕らは小さく微笑みあった。

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