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成果の行方7

カリカリとシャーペンの音が鳴る。静かな空間で皆が勉強に励んでいた。 センターが終われば、授業は全て二次試験対策だ。授業はなくなる。今は国語、今は数学と言った、やる科目が決められているだけだ。 上の方の大学だと、先生が演習用の課題を出してくれたりもする。それを解いたり、自分が持ってきた課題をしたりする。 もはや学校がただの自習室みたい。 ちらりと隣の颯太を見る。今の時間は国語で、颯太は先生が出した課題を時間を計って解いている。 色素の薄い榛色の瞳。高く整った鼻筋。モデルにスカウトされないのかなってくらい、整いすぎた見た目。 最初の頃は見るだけで死にそうなほど幸せだった制服姿。 最初の頃は会うだけで死にそうなほど幸せだった人。 家庭学習期間が始まれば、この姿ももう見られない。それどころか隣にいることが、そっと横顔を盗み見ることが、当たり前でなくなる。 「……っ」 不意に颯太の手が僕の手に重なった。シャーペンを持つ指の隙間から、颯太の指が侵入する。 颯太は声を出さずに唇を動かして『見つめすぎ』 と伝えてきた。 僕はそれだけで頬を熱くして、バッと俯く。颯太はくすくす笑って僕の手をいじり続けた。 ああ、愛しいなぁって、思った。 すごく辛いし、寂しいけれど、頑張らないとなって、思った。

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