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卒業1

寒い空気は逃げ始め、日の長さが伸び始めたこの頃。三月に入って最初の平日。僕は卒業式を迎える。 少し久々に感じる制服をまとい、身なりを軽く整える。指輪が見えないようにしっかりネクタイを締めて、僕は家を出た。 一歩出て、空を見上げる。からりと晴れた空が心地いい。 そこから視線を下げる。 「……! 颯太!」 「うわっ」 玄関の前では颯太が待っていた。思わず抱きついてしまう。 颯太はしっかり抱きとめてくれた。 「朝から大胆だなぁ。卒業式出たくなくなる」 「だって嬉しい」 「俺も。久しぶり」 ぎゅうと颯太に抱きついて、久々の体温を堪能する。勝手に顔がふにゃふにゃになってしまう。 電話よりメールより、何より颯太本人が一番。目の前にいることがすごくすごく嬉しい。 「いやーもう長すぎた。十二月からでしょ?我慢しんどかった」 「うん……でもやっと解放された」 「そうだね」 颯太は当然受かるだろうし、僕もセンター二次共に手応えは上々だ。後期の対策も多少はするつもりだけど、だいぶ心に余裕がある。 あとは残された颯太との時間を目一杯楽しむんだ。
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