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卒業3

颯太と一緒に教室に入る。ざわざわする教室でクラスメイトと挨拶を交わした。 前期試験は当然みんな終わっているので、教室内の雰囲気は柔らかい。 「おっはよー間宮、渡来!!」 「わっ、松村くん。久しぶり」 自分の席に行くと少し前の席の松村くんが僕と颯太に挨拶をしてくれた。清水くんや凛くん、轟くんも振り向いて挨拶してくれる。 僕と颯太はそれに笑顔で返した。 思ったより学校に着くのが遅くなってしまったので、もう松田先生が来る時間だ。 案の定、すぐにガラガラっとドアが開く。 「おお、みんな揃ってるな。おはよう」 久しぶりに見た松田先生は何も変わらなかった。少しいつもと違うのはスーツであることくらい。 「んじゃま、先にこの花配るな。胸につけとけ」 ピンク色の花を松田先生が配る。卒業式でありがちのやつだ。 松田先生は花が皆に渡っていくのを見ながら、口を開く。 「これつけて卒業式出たら、お前らはみんなここのOBになるってわけだ。合否が出てなくて卒業って感じはしないかもしれねぇけど、まあとりあえずはお疲れさん」 各々胸に花をつけながら聞く。この静かな様子は、普段からは想像もつかない。 「よく頑張ったよ、みんな」 そしてその言葉で、一同しーんと静まり返ってしまった。 一年以上お世話になった先生にこんなことを言われると、切なくなってきてしまう。 「次に学校に来んのは合否の報告だな。心配せずに待ってるわ」 ニッと笑った松田先生に教室の空気が揺らぐ。 誰かが「まっつん、らしくないー!」と叫んで、その流れを止めた。 「うるせぇ。体育館行くぞ」 いつも通りに戻った松田先生の言葉に、皆一様に頷いた。

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