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卒業5

「えっ……あ、でも、まだ受かるとは……」 「亜樹先輩が受かった大学を目指します」 「そんなのダメに決まってるでしょ」 「俺がどの大学目指そうと止められる筋合いはないですけど」 「亜樹に変なことするってわかっていて俺が許すはずない」 仁くんはどこまで僕を追うんだと驚いていたら、いつの間にやら颯太との言い合いが始まっている。周りのみんなもやれやれといった様子だ。 「じゃあ同じ大学受けたらよかったじゃないですか」 「俺も亜樹も、相手を追って自分の夢を潰すほど子供じゃないんで」 「頭がいい人は言うことが違いますね」 「仁、いい加減やめとけって」 清水くんがとうとう仲裁に入る。長いため息と共に発された言葉。仁くんはじとりと清水くんを見る。 「亜樹先輩のことあっさり諦めた人間の言葉は薄っぺらいね」 「あっさりなんかじゃねーし。あまり舐めた口聞くと怒るぞ」 「もう怒ってるけど」 仁くんの言葉は随分刺々しい。ストレスでも溜まってるのだろうか。 とにかくこうなっては誰とでも口論をしてしまうかもしれない。 誰か止められる人はいないのかと視線を巡らせる。松村くんと目が合った。 そっか、松村くんなら流石に仁くんも突っかからなそう。 不思議そうにする松村くんに助けを求めようとしたところ。 「蓮くーん!」 バーンと教室のドアが開いた。

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