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卒業6

「姫野」 「蓮くん、第二ボタンちょうだい!」 姫野くんはパタパタと清水くんに走り寄る。その腕にはなぜかプレゼントが乗せられていた。 しかし姫野くんはそんなもの気にせず、清水くんに右手を突き出した。 姫野くんのおかげで口論はやんだ。まさかの救世主だ。 「そのプレゼント何?」 「ん、これ? あ、えっと、あの、元カレたちに、最後だから貰ってほしいって懇願されちゃって……」 「だから素直に受け取ったの? 元カレたちのプレゼントを?」 清水くんは嫉妬丸出しの表情で姫野くんを責める。不機嫌そうな恋人の様子に姫野くんはしょんぼりとうなだれた。 清水くんも、姫野くんも、こんな表情するんだなって驚く。ちょっと微笑ましい。 「ご、ごめんなさい……」 姫野くんは上目遣いで清水くんを見つめ、ブレザーの裾をちょこんと掴む。 清水くんはその手を見て、姫野くんの顔を見て、それからため息。ブチッと第二ボタンをちぎりとる。 「ほら」 「え……」 「受験頑張ったから。センター俺より高かったしな」 清水くんは姫野くんの手に第二ボタンを握らせてあげる。そして柔らかく笑って姫野くんの頭を撫でた。 「……大好き、蓮くん」 ほにゃっと笑う姫野くんに、清水くんは嬉しそうだ。完全に二人の世界。

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