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精一杯の感謝1
卒業式を終えれば、受験生はやることが少なくなる。合格発表までそわそわしながら、身に入らない後期の勉強をしつつ、息抜きをしたりもする。そんな日々。
僕も颯太もある程度受かる自信はあったから、卒業してからデートを重ねていた。前みたいにお互いの家で過ごすこともある。
離れていた分を取り戻すために。
離れる分を貯めておくために。
「亜樹、お疲れ〜」
「お邪魔します」
そして合格発表の日。
僕は颯太の家に行った。
母さんは当然仕事だから家にはいない。でも一人では不安だし寂しいから、二人で見ることになった。
リビングに通されて二人でローテーブル前のソファに座る。
二人とも発表は十七時だ。あと数分ということで、ネットのサイトをすぐ開けるような状態にして待つ。
「スマホ折れちゃうよ」
「だ、だってもし……」
「大丈夫。落ち着いて」
スマホを強く握る僕を見て颯太が笑う。
でも仕方ない。手応えがあったとはいえ、不安なものは不安だ。もし受験番号がなかったら。僕はどこへ行くことになるのだろう。
僕の手を握ってくれる颯太に寄りかかる。
颯太の手を握り返しながら待つと、少し安心できる気がした。
「お、あと少し。同時に押そう」
「わかった。じゃあ、せー……の」
十七時になった途端、僕も颯太も大学のサイトに入る。アクセスは集中しているみたいだが、限度があるようで、意外とすんなり入れた。
ずらっと並ぶ英字と数字の羅列から自分のものを探す。
僕の番号は「J7056」だ。7047を見つけて、その下を見ていく。
7048、7050、7054…………
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