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なぞって、あるいて、こぼれて2
「やっぱり可愛い……!」
「ふふ」
動物園の中で僕の声が飛ぶ。周りの雑音に紛れてすぐにかき消された。
目の前にはキリンだ。前の時にも見たキリン。首が長くて大変そう、重そう、なんて会話をした。
「やっぱり動物って癒されるよね〜。少し残酷な気はするけどさ」
「うん……。可愛くて、やっぱ、好き」
平日ではあるが、もう高校生も春休みの期間だ。だから家族連れ、高校生、大学生と言った様々な年齢層の人で溢れていた。
人混みの中を僕と颯太は進む。
「あっ」
進んでいくとあるコーナーを見つける。これも懐かしい。
「ああ、ふれあいコーナー」
「颯太、行こう」
僕は颯太の腕を引いてふれあいコーナーを示す。颯太は動かない。
「……颯太?」
僕は不思議に思って颯太を見上げる。颯太は僕を見る。そして微笑む。
嬉しそうで、悲しそうで、寂しそうで、楽しそうで。
「行こっか」
「……? うんっ」
颯太はさりげなく僕の前に出て進みだす。颯太にエスコートされるなんて慣れっこだけど、やっぱり嬉しい。
そして子供や女性がいっぱいいるコーナーの中に入った。
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