906 / 961
なぞって、あるいて、こぼれて3
ふわふわのリスを掌に乗せる。初めて来た時より扱いが上手くなった気がする。リスに負担にならないように抱っこしたりできている気がするのだ。
そしてやっぱり可愛い。口元の緩みを抑えることもできず颯太を見る。
颯太も愛しそうにリスを撫でていた。リスと颯太の並びがすごく絵になっている。同じこと、前にも思った気がする。
「亜樹、変わったよね」
「……へ?」
てっきり気づいていないかと思っていたが、颯太は当たり前に声を出す。その視線はリスに注がれたままだ。
「明るくなって、積極的になって、あまり物怖じしなくなった」
「……颯太……」
「それだけ経ったんだよね。亜樹と出会ってから」
「……そうだね」
ああ、やっぱり、よくなかったかもしれない。
二人の思い出を改めて確認しようと、今日のデートは二人で行った場所を再訪することにした。
でも、だめだ。
こんなの、寂しくなるだけかもしれない。
泣いちゃうかもしれない。
最後のデートなんだから、ずっと、笑って、いたいのに。
「幸せだね、一年以上も一緒に過ごせて」
「うん。本当に」
颯太とのデートは楽しい。でもこれが最後だってわかっているから寂しい。
きっとそれは颯太も同じなんだと思う。
意識すまいとしても、平静に過ごそうとしても、どこか別れを考えてしまう。
「リス、可愛いね」
「ずっと見てたい」
「亜樹の方が可愛いけどね」
「……もう」
今日の僕らは少し、不器用だ。
ともだちにシェアしよう!