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なぞって、あるいて、こぼれて5
動物園、紫陽花園と回って、適当にお店をぶらついて、あっという間に時間は過ぎた。
不器用で、寂しくて、でもすごく楽しい、かけがえのない時間。
「最後はゲームセンターだ〜」
「ふふっ」
颯太が街を歩きながら言うもんだから笑ってしまう。
日はだんだん落ちてきている。今日はもうゲームセンターに寄って、夕飯を食べて、まあ、その、することをして……という流れかな。
颯太と懐かしいゲームセンターに入っていく。街の中でギラギラした空間。
僕はここに来るのは初デート以来だ。颯太もそうなのかなーとか思いつつ、うるさい中を進んでいく。当然来るのはクレーンゲームのところ。
「リスのやつまだあるんだ。人気なのかな?」
「ほんとだ。やりたい」
「うん。やろっか」
懐かしい。颯太が黄色のリスをくれたことを思い出す。そのあと僕は颯太に頼りきりで青いリスを取った。
「一人でやるから」
「……おっけー」
颯太が手伝う前にしっかり言っておく。笑いをこらえながら返事をされたのは不服だ。
でも僕だって自分一人で取りたい。そしてそれを颯太に……。
お金を入れて機械に向き合う。どの子を狙うか見定める。色とりどりのリスがいっぱいで選ぶのが大変だ。
「……そうだ」
ゲームセンターの喧騒に紛れて呟く。
いいことを思いついた。
僕はスイッチをいじりだす。
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