908 / 961

なぞって、あるいて、こぼれて5

動物園、紫陽花園と回って、適当にお店をぶらついて、あっという間に時間は過ぎた。 不器用で、寂しくて、でもすごく楽しい、かけがえのない時間。 「最後はゲームセンターだ〜」 「ふふっ」 颯太が街を歩きながら言うもんだから笑ってしまう。 日はだんだん落ちてきている。今日はもうゲームセンターに寄って、夕飯を食べて、まあ、その、することをして……という流れかな。 颯太と懐かしいゲームセンターに入っていく。街の中でギラギラした空間。 僕はここに来るのは初デート以来だ。颯太もそうなのかなーとか思いつつ、うるさい中を進んでいく。当然来るのはクレーンゲームのところ。 「リスのやつまだあるんだ。人気なのかな?」 「ほんとだ。やりたい」 「うん。やろっか」 懐かしい。颯太が黄色のリスをくれたことを思い出す。そのあと僕は颯太に頼りきりで青いリスを取った。 「一人でやるから」 「……おっけー」 颯太が手伝う前にしっかり言っておく。笑いをこらえながら返事をされたのは不服だ。 でも僕だって自分一人で取りたい。そしてそれを颯太に……。 お金を入れて機械に向き合う。どの子を狙うか見定める。色とりどりのリスがいっぱいで選ぶのが大変だ。 「……そうだ」 ゲームセンターの喧騒に紛れて呟く。 いいことを思いついた。 僕はスイッチをいじりだす。

ともだちにシェアしよう!