910 / 961
なぞって、あるいて、こぼれて7
「ちょっと待って、俺も取る」
「え?」
颯太は素早くお金を入れると、目にも留まらぬ速さでアームを動かす。
つまり僕に青いリスをくれるってこと、だろうか。多分そういう意味だと思う。
そう考えている間に颯太は取ってしまった。
速い。
「仲良しー」
颯太は取り出した青いリスと僕の黄色いリスにキスをさせる。スリスリと体を合わせるから、なんだか恥ずかしくなってくる。
「や、やめて……」
「えー、この子たちは離れ離れになっちゃうからさー」
「で、でもお家の子たちと一緒になるから……」
「ふふ、そうだね」
颯太は青いリスを僕の掌に乗せてくれた。僕はリスの頭を人差し指で撫でる。
僕の家にいる黄色いリス。これから青いリスも一緒。颯太みたいに綺麗で澄んでいる青色だ。
リスは一緒にいられるの、いいなぁ、なんて。
でもこれで僕が颯太を思い出せるなら、素敵だ。
「なんだか亜樹との物が増えていくね」
「……そうだね。颯太に貰ったものいっぱい」
「大学に毎日バングルつけていこっかな」
「……嬉しいし……女の子、寄ってこなそう」
颯太は絶対にモテる。でもバングルがあるなら、恋人がいると思ってもらえたりして。ちょっと心配だけど、それなら少し安心できるかも。
颯太は僕の頭を撫で、するすると頬まで辿っていく。
「じゃあ亜樹は左手の薬指に毎日指輪ね」
「……へ」
「そしたら悪い虫が寄り付かないし。亜樹は可愛いからね」
「……じゃあ、颯太もっ……」
「うん。もちろん」
迷いない返事に僕の顔はつい緩む。
高校と違って装飾品は自由だし。きっと薬指ならふざけて聞いてくる人もいなそうだし。いい案かもしれない。
「嬉しい」
「うん。俺も」
僕らはそっと肩を寄せ合った。
ともだちにシェアしよう!