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なぞって、あるいて、こぼれて7

「ちょっと待って、俺も取る」 「え?」 颯太は素早くお金を入れると、目にも留まらぬ速さでアームを動かす。 つまり僕に青いリスをくれるってこと、だろうか。多分そういう意味だと思う。 そう考えている間に颯太は取ってしまった。 速い。 「仲良しー」 颯太は取り出した青いリスと僕の黄色いリスにキスをさせる。スリスリと体を合わせるから、なんだか恥ずかしくなってくる。 「や、やめて……」 「えー、この子たちは離れ離れになっちゃうからさー」 「で、でもお家の子たちと一緒になるから……」 「ふふ、そうだね」 颯太は青いリスを僕の掌に乗せてくれた。僕はリスの頭を人差し指で撫でる。 僕の家にいる黄色いリス。これから青いリスも一緒。颯太みたいに綺麗で澄んでいる青色だ。 リスは一緒にいられるの、いいなぁ、なんて。 でもこれで僕が颯太を思い出せるなら、素敵だ。 「なんだか亜樹との物が増えていくね」 「……そうだね。颯太に貰ったものいっぱい」 「大学に毎日バングルつけていこっかな」 「……嬉しいし……女の子、寄ってこなそう」 颯太は絶対にモテる。でもバングルがあるなら、恋人がいると思ってもらえたりして。ちょっと心配だけど、それなら少し安心できるかも。 颯太は僕の頭を撫で、するすると頬まで辿っていく。 「じゃあ亜樹は左手の薬指に毎日指輪ね」 「……へ」 「そしたら悪い虫が寄り付かないし。亜樹は可愛いからね」 「……じゃあ、颯太もっ……」 「うん。もちろん」 迷いない返事に僕の顔はつい緩む。 高校と違って装飾品は自由だし。きっと薬指ならふざけて聞いてくる人もいなそうだし。いい案かもしれない。 「嬉しい」 「うん。俺も」 僕らはそっと肩を寄せ合った。

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