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番外編[猫プレイ②]
キスの合間に颯太は僕のズボンを脱がせていった。脱がせやすいように腰を上げる。
下半身に纏うものがなくなったところで、颯太はジーパンのポケットからローションを取り出す。
いつも思うけれど、事前準備が徹底されすぎだ。
颯太はキスをしたままローションを指に垂らす。僕は大人しく目を閉じてキスを感じていた。
「指入れるね」
「んっ……」
くちゅっと小さな音が鳴って、指が後孔に入りこむ。だいぶ慣れたもので、痛みは少ない。颯太の手つきも手馴れているし、特に痛みもなく僕は指を受け入れ始めていった。
「ひっ、あ……あぅ……」
「そうだ亜樹」
「んぇ……?」
「今日はこれからにゃーしか言っちゃだめだよ。亜樹は今から可愛い猫だから」
「へっ……、や、やだ……」
颯太はニコッと笑って、二本目の指を思い切り奥へ突き刺した。
「ひぁん!」
「違うよ、亜樹。にゃー」
「やぁ、そうたっ……」
「言うこと聞くまでやめない」
「ひっ、や、アアッ」
颯太は満面の笑みのまま、指を激しく抜き差しする。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が、颯太の部屋に響く。颯太は本当に容赦がなくて、前立腺も奥もしっかり攻めてくる。
僕は気持ちよくて仕方ない。もちろん性器は既に勃ち上がっている。止まらない快楽の波に僕の理性は浸食されていく。
「ほら、あーき」
「……に……」
「んー?」
「……にゃあっ……」
「うん、可愛い」
ぎゅっと目を瞑って鳴く。颯太は満足げな声を出して、指を引き抜いた。
やっと終わった。
僕は安堵に包まれて、一つの言葉を失念していた。そう、これからという颯太の言葉。
「じゃあご褒美あげるね」
「にゃ……?」
「約束守れて偉いね」
つい条件反射で猫真似をしてしまった。颯太の指摘に僕の頬は真っ赤に染まる。でも優しく頭を撫でられたのでどうでもよくなってしまう。
「……ひにゃあ!」
だけど急に後孔に侵入してきた異物に目を見開く。この場合は尻尾に決まっている。
「じゃあ体勢変えよっか」
「……ぁ、にゃっ……」
颯太は尻尾を奥まで差し込んで、僕の背の下に腕を通す。そしてそのまま抱き起された。
ちょうど向かい合う形で僕らはソファに座る。颯太からは僕の耳も尻尾もよく見える。
「似合ってる」
「……」
「不満そうな顔してるね。じゃあもう少しご褒美あげる」
颯太はニコニコと心底嬉しそうに言う。それからまたポケットから何かを出す。
どうやらそれは金色の鈴がついた黒い紐みたいだ。猫耳と尻尾とお揃いの黒。
颯太の言うご褒美はご褒美でないことは自明のこと。見た感じは首輪のようだ。
「首輪とこっちで迷ったんだけどねー」
「……?」
颯太は嬉しそうに僕を見て、その紐を僕の性器に近づけていく。
「……やっ……」
「亜樹?」
思わず拒否の言葉と共に颯太の手を掴む。でも颯太は笑顔で約束を守れない僕を見るだけだ。威圧のある視線に、僕は静々と手をどけた。
颯太はちゅっと僕の額にキスを落とす。それから僕の性器に黒い紐を縛り付けた。りんっと澄んだ音が下から聞こえる。
「うん。可愛い」
シャツの隙間から覗く性器と鈴。
それがより卑猥に見せているような気がする。もう僕はイキそうだったのに、このようなことをされたらたまらない。
「さっき約束破ったし、振動は最大でいいよね」
「……!」
颯太が取り出したリモコン。それはつまり、僕の尻尾が振動するということ、だろう。
僕はいやいやと首を振る。
そもそも約束なんて颯太が勝手に作ったものなのに。でも猫の声しか出せない僕に、反論は不可能だ。
もちろん僕のジェスチャーも受け入れてもらえるわけはない。颯太は無情にスイッチを一番上にずらした。
途端、襲い来る激しい振動。
「にゃあぁっ! にゃっ、やにゃあ……」
苦しい。痛い。気持ちいい。訳が分からない。
僕が身をよじると、それに合わせて鈴が涼やかな音を鳴らす。鈴のわずかな重みが更に僕の性器を辛くする。
「可愛いよ、亜樹。尻尾が揺れてる」
「ひっ、にゃっ……にゃうん!」
颯太は片手で猫耳カチューシャを触り、もう片方で尻尾に触れる。
ブブブッと振動しているそれを、颯太は緩く抜き差しし始めた。尻尾の付け根を掴んで、浅いところから深いところまで満遍なく攻める。
「……ひにゃっ!」
「ここ気持ちいい?」
そして最終的に颯太が止めたのは、前立腺。
「にゃっ、にゃああ! やらっ……にゃああん」
「ふふ、気持ちいいね」
颯太は楽しそうにぐりぐりと前立腺に押し付ける。僕は颯太の肩を掴んで、ただひたすら喘ぐしかできない。鈴が何度も揺れて音を立てる。
すっかり後ろでイケるようになった体は、もう出したくてたまらないと訴えてくる。
目の前がチカチカと白む。
勝手に涙の溢れてきた瞳をこじ開ける。視界いっぱいに颯太が映る。愛しそうに、幸せそうに、僕を見つめる颯太。
「……にゃっ……しょう、たっ……そう、たっ……」
もう約束なんて忘れて、僕は恋人の名を呼んでしまう。ぎゅっと抱き着いて自分から唇を寄せる。
そっと離せば、颯太の榛色が視界に入る。
「亜樹……」
「ひゃ……」
颯太は無言で尻尾を引き抜く。床に投げ捨てられた尻尾が軽く音を立てる。
だけど今の僕にはそんなことを気にしている暇はない。目の前の颯太が情欲に燃えている。今にも食らいつきそうな勢いだ。
バクバクと心臓が高鳴りだす。
「煽ったのは亜樹だよ」
「えっ、ま……これほどっ……!」
「ごめん、待てない」
「やっ、颯太……ひあぁ!」
颯太の熱いものが僕を貫く。
リンリンと鈴が綺麗な音を立てていた。
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