928 / 961

番外編[猫プレイ②]

 キスの合間に颯太は僕のズボンを脱がせていった。脱がせやすいように腰を上げる。  下半身に纏うものがなくなったところで、颯太はジーパンのポケットからローションを取り出す。  いつも思うけれど、事前準備が徹底されすぎだ。  颯太はキスをしたままローションを指に垂らす。僕は大人しく目を閉じてキスを感じていた。 「指入れるね」 「んっ……」  くちゅっと小さな音が鳴って、指が後孔に入りこむ。だいぶ慣れたもので、痛みは少ない。颯太の手つきも手馴れているし、特に痛みもなく僕は指を受け入れ始めていった。 「ひっ、あ……あぅ……」 「そうだ亜樹」 「んぇ……?」 「今日はこれからにゃーしか言っちゃだめだよ。亜樹は今から可愛い猫だから」 「へっ……、や、やだ……」  颯太はニコッと笑って、二本目の指を思い切り奥へ突き刺した。 「ひぁん!」 「違うよ、亜樹。にゃー」 「やぁ、そうたっ……」 「言うこと聞くまでやめない」 「ひっ、や、アアッ」  颯太は満面の笑みのまま、指を激しく抜き差しする。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が、颯太の部屋に響く。颯太は本当に容赦がなくて、前立腺も奥もしっかり攻めてくる。  僕は気持ちよくて仕方ない。もちろん性器は既に勃ち上がっている。止まらない快楽の波に僕の理性は浸食されていく。 「ほら、あーき」 「……に……」 「んー?」 「……にゃあっ……」 「うん、可愛い」  ぎゅっと目を瞑って鳴く。颯太は満足げな声を出して、指を引き抜いた。  やっと終わった。  僕は安堵に包まれて、一つの言葉を失念していた。そう、これからという颯太の言葉。 「じゃあご褒美あげるね」 「にゃ……?」 「約束守れて偉いね」  つい条件反射で猫真似をしてしまった。颯太の指摘に僕の頬は真っ赤に染まる。でも優しく頭を撫でられたのでどうでもよくなってしまう。 「……ひにゃあ!」  だけど急に後孔に侵入してきた異物に目を見開く。この場合は尻尾に決まっている。 「じゃあ体勢変えよっか」 「……ぁ、にゃっ……」  颯太は尻尾を奥まで差し込んで、僕の背の下に腕を通す。そしてそのまま抱き起された。  ちょうど向かい合う形で僕らはソファに座る。颯太からは僕の耳も尻尾もよく見える。 「似合ってる」 「……」 「不満そうな顔してるね。じゃあもう少しご褒美あげる」  颯太はニコニコと心底嬉しそうに言う。それからまたポケットから何かを出す。  どうやらそれは金色の鈴がついた黒い紐みたいだ。猫耳と尻尾とお揃いの黒。  颯太の言うご褒美はご褒美でないことは自明のこと。見た感じは首輪のようだ。 「首輪とこっちで迷ったんだけどねー」 「……?」  颯太は嬉しそうに僕を見て、その紐を僕の性器に近づけていく。 「……やっ……」 「亜樹?」  思わず拒否の言葉と共に颯太の手を掴む。でも颯太は笑顔で約束を守れない僕を見るだけだ。威圧のある視線に、僕は静々と手をどけた。  颯太はちゅっと僕の額にキスを落とす。それから僕の性器に黒い紐を縛り付けた。りんっと澄んだ音が下から聞こえる。 「うん。可愛い」  シャツの隙間から覗く性器と鈴。  それがより卑猥に見せているような気がする。もう僕はイキそうだったのに、このようなことをされたらたまらない。 「さっき約束破ったし、振動は最大でいいよね」 「……!」  颯太が取り出したリモコン。それはつまり、僕の尻尾が振動するということ、だろう。  僕はいやいやと首を振る。  そもそも約束なんて颯太が勝手に作ったものなのに。でも猫の声しか出せない僕に、反論は不可能だ。  もちろん僕のジェスチャーも受け入れてもらえるわけはない。颯太は無情にスイッチを一番上にずらした。  途端、襲い来る激しい振動。 「にゃあぁっ! にゃっ、やにゃあ……」  苦しい。痛い。気持ちいい。訳が分からない。  僕が身をよじると、それに合わせて鈴が涼やかな音を鳴らす。鈴のわずかな重みが更に僕の性器を辛くする。 「可愛いよ、亜樹。尻尾が揺れてる」 「ひっ、にゃっ……にゃうん!」  颯太は片手で猫耳カチューシャを触り、もう片方で尻尾に触れる。  ブブブッと振動しているそれを、颯太は緩く抜き差しし始めた。尻尾の付け根を掴んで、浅いところから深いところまで満遍なく攻める。 「……ひにゃっ!」 「ここ気持ちいい?」  そして最終的に颯太が止めたのは、前立腺。 「にゃっ、にゃああ! やらっ……にゃああん」 「ふふ、気持ちいいね」  颯太は楽しそうにぐりぐりと前立腺に押し付ける。僕は颯太の肩を掴んで、ただひたすら喘ぐしかできない。鈴が何度も揺れて音を立てる。  すっかり後ろでイケるようになった体は、もう出したくてたまらないと訴えてくる。  目の前がチカチカと白む。  勝手に涙の溢れてきた瞳をこじ開ける。視界いっぱいに颯太が映る。愛しそうに、幸せそうに、僕を見つめる颯太。 「……にゃっ……しょう、たっ……そう、たっ……」  もう約束なんて忘れて、僕は恋人の名を呼んでしまう。ぎゅっと抱き着いて自分から唇を寄せる。  そっと離せば、颯太の榛色が視界に入る。 「亜樹……」 「ひゃ……」  颯太は無言で尻尾を引き抜く。床に投げ捨てられた尻尾が軽く音を立てる。  だけど今の僕にはそんなことを気にしている暇はない。目の前の颯太が情欲に燃えている。今にも食らいつきそうな勢いだ。  バクバクと心臓が高鳴りだす。 「煽ったのは亜樹だよ」 「えっ、ま……これほどっ……!」 「ごめん、待てない」 「やっ、颯太……ひあぁ!」  颯太の熱いものが僕を貫く。  リンリンと鈴が綺麗な音を立てていた。

ともだちにシェアしよう!