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番外編[酔いどれ柊くん②]
「あーすみません! おい、村本さん来たぞ!」
店の前に着くと菊田が柊と一緒に縁石に座っていた。周りを見ると他に人はいないようだから、帰らせたようだ。菊田のことだから先に帰してくれたのかもしれない。
「悪いな。面倒見させて」
「いや、悪ノリした俺らが悪いんで」
「せいや……か……?」
「そうだよ。村本さん」
菊田の横でずっと顔を下げていた柊がおれを見る。その顔は暗がりでもわかるほど赤い。
こんなに弱いんだな、こいつ。
「せいや……むかえ、きてくれた……」
「帰るぞ、柊」
「うん、帰る」
グッと息を飲む。
菊田の前だ。堪えろ。唇噛み締めろ。
柊は素直におれに腕を伸ばし、そのまま抱きついてくる。菊田もおれも驚いて固まる。ちなみにおれはその可愛さに悶えてもいた。
「……じゃあ、俺はこれで。柊、じゃあな」
菊田がひらひら手を振ると、柊は手を振り返す。言葉は何もなかった。動作を真似しただけなのかもしれない。
「とりあえずタクシーだな」
「……あるく」
「は? お前、んな状態で歩けっかよ」
「……やだ」
酒の入った柊はどうやら退化するようだ。普段より幾分素直で、幾分子供っぽく、わがまま。押し殺してきた感情ってやつ。
おれはため息を吐くと、柊の腕を肩に回させた。可愛い恋人に強請られては断れるわけもない。
柊を気遣いつつ、おれは歩き出す。意識は朦朧としているみたいだが、足取りはわりかししっかりしていた。
「……せいや、かっこよくて、好き……」
「……さんきゅ、おれも好きだよ」
「違う。僕の方が、好きなんだ」
「なんだそれ。比べるのかよ」
柊は歩きながらおれの肩に頭を擦り付ける。
可愛いからやめてほしい。どうせ家に帰ったらすぐ寝てしまうに決まっている。
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