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番外編[颯太だからなんです②]

その日の放課後。 僕と颯太はいつものように二人で帰路についていた。夕日が僕と颯太を橙色に照らしている。 「あのね、颯太。今日、新しい友達できたんだよ」 「そうなんだ。よかったね」 「同じ本が好きでね、また話そうねって約束した」 「あの時嬉しそうだったね、亜樹」 「えっ、見てたの?」 「トイレ行こうとしたらたまたま」 颯太を驚いて見ると、綺麗な笑みが浮かんでいた。嫌な予感がする。急いで自分の行動を思い返す。 「……あ」 「ふふ。手を握るのはダメだよね」 「で、でも、あの……」 「うん。嬉しいよね〜。でもな〜俺がいるのにな〜」 颯太が笑顔のまま沈んだ声を出すから、あわあわしてしまう。 違うのに。全然そんなつもりないのに。でも確かに、手を握るのはあまり良くないかも。僕も颯太が知らない人の手を握ってたら……嫉妬、する。 「ごめんね……でも、颯太が好きだよ」 僕は颯太の手を取る。きゅっと両手で握る。 颯太の手は温かくて頼もしくて、大好き。手からじわじわと颯太の体温が伝わってきて、口元に笑みがにじむ。 「触れるだけで嬉しくなるの……颯太だけ」 「じゃあ、亜樹からキスしてよ」 「えっ」 顔を上げる。颯太はニヤニヤしている。 嵌められた。なぜ気づかなかったのだろう。颯太は僕に友達ができたら素直に喜ぶに決まっているのに。

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