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番外編[遠い②]

「まあ、君がやると絵になるけど」 「どうも〜」 「嫌味な人間だな」 杉元くんは嫌そうな顔をして、人差し指でメガネを上げた。 杉元くんもこの授業には飽きているのか、机の上にノート以外のものを広げている。やはり類は友を呼ぶのかもしれない。 「何か悩みでも?」 「んー……遠距離って辛いよなぁと」 「惚気はいらない」 「本音だよ、本音」 眩い笑顔を杉元くんに向けると、しっしっと手で払われた。杉元くんのこういうところも割と好きで、一緒に居やすい。 「恋人さんとなかなか会えないのか?」 「向こう住んでるの東北なんだよね」 「それは容易には会えないな……」 「そうなんだよー」 また漏れそうになるため息。隣の視線を感じて、息を飲み込んだ。 それからまた頬杖をつく。窓の外を見る。 青々と茂る葉に、綺麗な青空。 嫌味ったらしい美しさだ。 「まみ……」 杉元くんが声を上げたのと、俺のスマホが震えるのが同時だった。 画面に表示される『渡来亜樹』の文字。 瞬間的に応答する。

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