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番外編[在りし日①]

「そろそろお腹空かない?」 ある日の昼下がり。俺は亜樹とのんびり俺の家で過ごしていた。いわゆるお家デートというやつだ。 「そうだね。僕なんか作るよ」 「んー、一緒に作ろっか」 「……うんっ」 ふわりと笑う亜樹。とてつもなく可愛い。腕によりをかけようと強く思った。 その前に机の上を片付けようと、出しっ放しにしていた本の類を手に取る。そして本棚の空いたスペースに戻した。 「颯太、何か落ちたよ?」 「え?」 見れば亜樹が手に何かを持っている。写真だ。 「……これ、柊先輩……?」 亜樹が驚いたような、不思議そうな、表情をして写真を見ている。俺はそれを亜樹から受け取った。 そこには若い柊が写っている。隣には俺。二人とも爽やかに微笑んでいる。おそらく小学校低学年くらいの時期のものだ。 「そうだね。これ、俺と柊」 「二人とも可愛い……」 亜樹はぽろっと言うが、どこか奥歯に物が挟まったような言い方だった。 「なんでこんなに仲良さげかって?」 「あっ……ごめん」 「いいって」 昔の俺と柊は仲が悪い。亜樹はもちろんそれを知っている。まあ、柊が俺を一方的に嫌っていただけだけど。 ちょうどこの写真の時期は、まだ嫌われているとわかっていない時期だった覚えがある。 あの頃の俺はたぶん、幼すぎた。 ---

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