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番外編[在りし日⑤]
「これは、その時の写真。たぶん目的は雑誌かサイトに載せることだったんだろうね」
「……颯太にとっては目的どころじゃないよね」
「まあ、あの時はね」
亜樹は寂しそうで悲しそうな顔で俺を見る。
たしかにあの時期の俺と柊は、俺が可哀想に見えるだろう。でも幼い俺だって十分浅はかだったのだ。その浅はかさで柊を常に傷つけていたのだろう。
何も見えていないただの子供だったのだ。残酷なくらい無邪気だったのだ。
「ずっとこの写真、持ってたんだね」
「なんだかんだねぇ……。当時は、今考えると戒めのためかな。柊は俺を嫌いなのに、話しかけちゃった自分への」
「そんな……」
「まあまあ。捨てるわけにもいかないし、そう思うしかなかったんだ」
「そっか……」
亜樹はまだ悲しそうな顔をしている。余計な気を使わせてしまった。
俺は亜樹に手を伸ばし、その体を抱き寄せる。
「ありがと。俺のために」
力一杯抱きしめて、その頭にキスをする。亜樹は素直に抱き返してきて、俺の胸に顔を埋めた。
「よかった。今は仲直りできて」
「でしょー。だから何も問題ないの。過去は過去だよ」
「……そうだね」
亜樹が顔を上げる。ほんのり笑っていた。俺は安心して、その唇を食んだ。
幼い俺がどこかでよかったねと、言っているような気がする。
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