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夜の出会い3

生まれてこの方、友人と呼べる友人がいた試しがない。学校では話しかけられたら話す。そんな状態だ。話しかけてくる人は殆どいないけれど。 だからこそ自分の家の、自分の部屋に、人がいる。それがどうしても信じられない。 珍しい光景を暗闇の中でじっと見つめ続ける。 「……あっ、すみません。で、電気、つけますね」 はたと気づいて電気をつける紐に手を伸ばした。 「お願い、電気はつけないで」 「……? はい」 手を下ろす。 暗いところが好きなのだろうか。いや、そんな理由ではないだろう。 改めてコウさんを見てみる。なんだか息が荒く、苦しそうだ。定かではないが顔も赤いような気がする。 そこまで観察して、ハッと思いつく。 「ちょっとトイレ貸し……」 コツンと小さく音を立て、額と額がくっつく。額はそこまで熱くない。だが頬は火照っているようだ。 「だ、大丈夫、ですか……? あの、風邪かと、思ったん、ですけど……」 額をくっつけたままそう問いかける。見開かれた彼の瞳が僕を見る。 「……無自覚なんだろうけどさ、そういうの困る。こっちは我慢してんのに」 「……え?」 頭に疑問符が浮かんだ次の瞬間、押し倒されていた。僕が仰向けで、コウさんが上に乗って。 状況が飲み込めない。

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