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穴を埋める光8
「ほら、お願い。亜樹」
コウさんが僕を見つめて待っている。
緊張と他にもなんだかよくわからない感情で唇が震える。
だけど勇気を振り絞って、スッと息を吸ってから口を開いた。
「……えっと、わ、わかっ……た……」
「そう」
「……っ」
息を飲む。
だってコウさんがあまりにも嬉しそうに笑うから。
「だ、だめ……コウさん……」
思わず腕で顔を覆う。口からは僕自身にも意味のわからない言葉が出た。
おかしい。やっぱり僕、おかしい。
夜に人を家に入れたのも、あんなことをしたのも。人と関わって嬉しいのだって、人と話して嫌なドキドキじゃないのだって、こんな風に顔が熱くなって、訳が分からなくなるのだって。
全部、全部、初めて。僕が僕でないみたい。
腕が震える。
なんだか怖い。なぜかは僕に分からないけれど、とにかく怖い。体の中心から、冷めていくよう。
「亜樹、さん付けもダメ」
そこから僕を解放したのは、コウさんだった。
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