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穴を埋める光10

「さて、じゃあ話していこうか」 そしてやっと本題に移る。 コウさん、いや、コウが夜空を見上げる。長く息を吐いていた。 僕もなんとなく真似て、上を見る。 白く光る三日月とまわりに少しの雲。綺麗だと思う。 「昨日無理やり媚薬飲まされちゃったんだよね」 「……びや……く……?」 「そう。媚薬」 言葉の意味を理解して、顔がボッと熱くなる。僕でもそれくらいは知っている。 驚いた拍子に隣を見るが、コウは僕を見ていなかった。ちらっと視線だけ僕に向け、すぐ元に戻した。僕も前に視線を戻す。 「まあ、遅効性だったのが幸いして、撒いて逃げることができたんだ」 「……その、平気……なの?」 「んーうん。平気だよ」 「……なら、よかった……」 その返答にチクリと胸が痛んだ。思わず俯く。 そんな資格、僕にはないのに。 出会ってからたった二日で何もかも話すわけない。僕だってまだ心を開ききっているわけではないし。 だからこの痛みは理不尽なもの。抱いてはいけないものだ。 「ただ薬が効いてきて、家まで持ちそうになくなった。そこで……」 さぁっと風が吹いて髪の毛を揺らす。その拍子に顔を上げる。どこからか桜の花びらが飛んできていた。まだ散っていない木もあるようだ。 「亜樹に出会った」

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