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穴を埋める光12
「……えっ?」
今、なんて。
聞こえた言葉が信じられなくて、顔から笑顔が消える。目を丸くしてコウを見つめる。
「あっ、いや、そうだよね。こんな酷い人間に会いたいなんて、思うわけないよね」
「や、ちが、違くて……!」
悲しそうに笑うコウに思わず大きな声が出る。
「その、そんなこと言われると、お、思ってなくて……、だから、えっと、えと……、嬉し……くて……」
「……嬉しい? てことはまだ会ってくれる?」
「う、うん……」
問われた声に頷き、そのまま俯く。
今更ながら自分の言動に恥ずかしくなってしまう。
嬉しいとか……どう思ったろう。昨日会ったばかりなのに、これからも会えるのが嬉しいなんて、早計な判断ではないのだろうか。
そもそも世間一般の人間は、どれくらいの期間で相手のことを判断して、今後の関係をどうするか決めるのだろう。
ぐるぐる考える僕の横で、コウがはぁーっと大きく息を吐く。
「あー……よかった。絶対断られると思った」
「……え、ど、どうして?」
「だって謝った時に亜樹、笑うから。俺に向かって初めて。しかも言葉詰まってなかったし。あーこれは気を遣わせてるーってね」
そんなに僕は笑っていなかっただろうか。でも考えてみればそうかもしれない。
いつもコウの表情や所作に緊張していたから。
それに僕のことだ。夢中で話してる時は、どうせ俯いてるか困り顔かなのだろう。
またも思考に耽る僕の視界に、腕が伸びてくる。目の前に手が差し出されている。どういうことだろう。
不思議に思って隣を見ると、コウが「握手」と短く伝えてくる。
なんで握手?
その思いはもちろん飲み込んで、黙ってコウの手を握る。
「改めてよろしくね、亜樹」
するとこれまた眩しい笑顔でコウが言う。アイドルさながらの爽やかなスマイルだ。
「あ……よ、よろしくお願いします。コウ」
また敬語になってると楽しそうに笑うコウの横で、僕はその手の温かさを感じていた。
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