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穢れた僕と1

今僕はスーパーに向かっている。その理由は単純。食材が切れたから。 今朝、朝ごはんを作ろうと冷蔵庫を開けたら見事に中身がスカスカだった。卵もなければ、ベーコンもないし、食パンもない。 そのせいで僕の朝食は味噌汁のみという寂しいものになってしまった。 スーパーへ向かう並木道を歩きながら、それを思い出して項垂れる。 「亜樹?」 そんな僕に背後からかかる声。 条件反射で体が強張る。かばんの持ち手を強く握り、小柄な体をさらに縮こめる。 カタカタと震える僕の前に、その人は姿を現した。 濡れ羽色の髪に、奈落のように真っ黒な瞳。端正な顔立ちをしているが、その表情は驚くほど冷たい。 この人は九条柊(くじょうしゅう)。大手企業、九条グループの長男で、僕の通っている高校の生徒会長でもある。 彼はぺたりと余所行きの笑顔を貼り付けて、僕のことを見ている。その笑顔を見た瞬間、悪寒が身体中を駆け巡る。 「このようなところで会うなんて奇遇だな」 「……あ、そ、そうですね。ほ、んとに……すごい、偶然……」 怖い。怖い。嫌だ。助けて。怖い。嫌。いや。 脳内が恐怖で埋め尽くされて、目の前の人を見ることができない。 「今から買い物か?」 「え、あ、や、あの……も、もう終わった、ので、あの、平気で……し、失礼します」 早口でそう告げて、会釈。それから夢中で駆け出した。 あんなの嘘だし、絶対嘘だとバレている。だけど今の僕にそれを気にする余裕はない。 ただ怖くて、だから逃げたい。 半ば本能で必死に走った。

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