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穢れた僕と3
あ、だめだ。
起きる前のまどろみの中でそう感じる。
その意思に反して瞳は開き、それと同時に回る世界が視界を埋める。
予想はしていたけれど、かなり酷いめまいだ。
どちらが上か下か、そもそも自分の部屋にいるかどうかも判別できないほど。
このまま目を瞑ってしまいたい、動きたくない。そう思う。
だけどこれからコウが来る。
ゆっくり体を起こし、壁際まで這っていく。急激に酷くなる揺れが治まるのを、壁に背を預けて待つ。
しばらく待てば少し楽になった。あらかじめ傍に置いておいたペットボトルに手を伸ばす。
蓋を開け、一口飲む。
清らかな水が舌を撫で、喉を滑り、胃に落ちていく。その感覚がまざまざと感じられた。
皮肉なことに、こういう時ほど水は美味しい。
ペットボトルを置いて、ふぅっと息を吐く。
それから今度は窓に向かった。またコウに支えられながら歩くなんて、恥ずかしすぎて出来ない。だったら先に自分から行ってしまえばいい。
やはり這ってノロノロ進み、窓を開ける。昨日コウと話した時みたいに窓に座る。体を窓に預けて、ぼんやり前を見つめる。
息を吸うと冷たい空気が鼻を通り脳まで届く。
夜の空気はやっぱり好きだ。
特有の空気や静けさが僕を包み、頭をスッキリさせてくれる。少しずつ落ち着いてきためまいと共に、コウを待った。
……本当に来てくれるかは、わからないけれど。
昨日の言葉が嘘だとは流石に思っていない。でも急に用事が入ったり、時間が時間だから寝てしまっていてもおかしくないのだ。
そう考えると急に不安になってきた。コウに会えると思えば頑張れたけど、もしそれで今日会えないとしたら。
今日が日曜日で、明日が月曜。明日は学校。
僕があの人から逃げたのは、今日。
また震えそうになったところで、足音が聞こえた。
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