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穢れた僕と5
教室のドアに手をかけ、開ける。
これだけの行為がとても久しぶりに感じた。
金曜日にコウと出会って、土曜日にこれからも会うと約束して、日曜日に色々話した。
まるで怒涛のような週末だった。中身の濃い出来事がありすぎて、頭が整理できてないのだろう。
だって毎日誰かと会話するということだけで僕には一大事だ。
足を踏み入れた教室はいたっていつも通り。
まだ朝早い時間だから人はまばらだ。小さな声で会話していたり、一人黙々と勉強していたり。
特に挨拶をすることもなく、自分の席へと辿り着いた。
僕の席はベランダ側の一番後ろ。きっと多くの人が喜ぶ席なのだと思う。だけど僕にとっては不都合の方が多いかもしれない。
黒板は遠くて見えにくいし、先生の声だって場合によっては聞こえづらい。
良いところを挙げるとすれば、隣の人がいないことくらいか。
僕の隣の席の人は間宮颯太という人で、いわゆる『不良』らしい。
噂によれば、ある時そういう人たちと知り合い、あっという間に悪い道へ。夜遊びやら危険なことやらを繰り返し、学校は毎日サボり。目が合えば殴られる。金を巻き上げられた人は数知れず。目をつけられたら人生が終わる。そんな怖い人物だという。
流石に全てが本当かどうかは疑わしいけど、実際学校には来ていない。二年になってからもう一ヶ月くらい経ったけど、一回も姿を見たことがなかった。
申し訳ないけど、そのおかげで僕は毎日安心して学校に来ることができる。人と話す回数も、僕の挙動を見られる可能性も、減るから。
ただもしその人が学校に来たらどうしようという不安はあるけれど。
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