33 / 961
穢れた僕と12
……気持ち悪い。
そう思って目を覚ます。
ぐるぐる回る視界。胃の中のものが迫り上がってくるような感覚。
自分が寝ているのかも、ちゃんと部屋にいるのかもわからない。
ただ視界が回って、気持ち悪い。それだけ。
あのあとなんとか授業は受けたが、家に帰ってからは何かできるような状態ではなかった。だからろくにものも食べず寝てしまって、今の状況だ。
吐き出すものは何もないからただ吐き気だけが続く。
おそらく今、僕は仰向けに寝ている。
そこから体を反転させる。酷くなるめまいに耐え、枕元の水に手を伸ばす。ゴトッとペットボトルの倒れる音が鳴る。
……ああ、もう、いいや。
伸ばした腕を戻すのも面倒。元の位置に戻るのも面倒。
このままどうなったっていい。こんな苦しいなら、死んだっていいや。これからもあんなことされ続けるなら、死んでいい。寧ろその方が幸せ。
そんな投げやりな思考のもとで動きを止めた。
「……っき!……亜樹、亜樹!」
コウの声が、する……?
「……コウ?」
うつ伏せのまま掠れた声を出す。
すると体に手が回って抱き起こされたような気がした。回る視界にコウの顔が追加されたから、それは正解のようだ。
「亜樹、良かった。大丈夫?」
なんでコウがここにいるんだろう。そういえば何もできなかったくせに、窓の鍵だけは開けておいた覚えがある。
せっかく来てくれたのにこんな状態で申し訳ない。でも嬉しい。それになんだか安心する。吐き気も落ち着いていくようだ。
「亜樹……? もしかして聞こえてない?」
その声でハッと我に帰る。
ともだちにシェアしよう!