36 / 961
穢れた僕と15
「……えっと、座って待ってて」
ついてきたコウにそう言ってキッチンに入る。
何を作ろう。コウは洋食と和食、どちらが好みなんだろうか。
ちらとテーブルに座るコウに目を向ける。
綺麗な茶髪に、スッと通った高い鼻、榛色の瞳。
よし、洋食にしよう。
安直な判断だと我ながら思うが迷うよりはいいだろう。
食パンを二枚、トースターに入れる。それから冷蔵庫を開けて卵を取り出した。
いつもならこれで終わりだが、さすがに客人に対しては粗末だろうか。でも豪華にできるほどの余裕はない。
試しに冷蔵庫の下の段を開けてみる。
「……あ」
たまたま一つ残っていたリンゴ。
それも手に取って、調理台に向かう。
卵はスクランブルエッグにして、トーストにはバターを塗り、リンゴは切って。
出来上がった朝食をダイニングへ持っていく。
「……」
はい、か、どうぞ、かそれとも何も言わない方がいいのか迷って、結局は何も言わずにコウの前に置いた。
自分の席にも皿を置いて椅子に座る。
「うさぎだ」
コウがうさぎ型に切ったリンゴを見て微笑む。
動物といった可愛いものは嫌いじゃない。寧ろ好きな方だ。
だからついうさぎ型に切ってしまったけど、コウは引いただろうか。男のくせにって。
「可愛いね。手先が器用なんだ」
「あ……、ありがと」
予想とは裏腹にコウは引いた様子など微塵も見せない。楽しそうにリンゴを見てから、いただきますと言って食べ始めた。
「ん、美味しい」
その返答に安心してから、僕も食べ始めた。
ともだちにシェアしよう!