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静かな波立ち1

連絡先を貰ってから二週間くらい。 コウは本当に毎日来てくれて、その都度、他愛のない話をたくさんした。 好きな食べ物だったり、趣味だったり、誕生日だったり、そんな些細なこと。 誕生日の話は同じ十二月生まれだと盛り上がったりもした。 だからここのところ毎日、夜中が楽しみだ。最近はテスト前の影響か、彼の接触もない。おかげでめまいは軽い日々が続いている。 そのせい、といった方がいいのか、そこまで言う必要はないのか、それはわからない。 だがとにかく最近調子がいいからと、今日は夜遅くまで勉強をやり続けている。 夜中に近づくにつれめまいは始まったけど、まだ非回転性だから大丈夫だ。キリのいいところまでやりたいから、あと少しだけ。 実はこれを何回続けたかわからないけど。 そんなこんなで勉強を続けていると、窓をがノックされた。 もうコウの来る時間か。 「亜樹、入るよ」 「どうぞ」 「おじゃまします」 カラカラと音を立てながら窓が開いて、コウが入ってきた。机に座る僕を見て、少し目を丸くする。 「まだ起きてたの」 「うん、テスト前だから……」 「めまいは?」 「……起き続けてると、平気だよ」 「ほんと?」 コウが近づいてきて、僕に向かって笑む。その綺麗な顔の中の瞳。それに見つめられると何もかも見透かされてそうな気がしてくる。 嘘は通じない。 後ろめたい気持ちも相まってそう思うのだろう。 「えっと……少しだけ。で、でも、非回転性だから。だから、平気」 「ダメだよ、ちゃんと寝なきゃ」 「ごめんなさい……でも、あと少しだけ……」 「だぁめ。遅くまで頑張って、寝不足で、授業に集中できない。それが一番危険だってわかるでしょ?」 「うん……、だけどね……」 懸命に言い訳をしながら、自分の粘りに内心驚く。 人との関わりが苦手な僕は、普段から誰かに対して言い返すとか、本当に思ったことを言うとかはできない。喋ると言葉に詰まったり、どもったりするのも常だ。 だからまだ遠慮はあるとはいえ、ここまで誰かと喋れるというのは、大きな成長だ。

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